食文化と四季

田んぼには一面の菜の花やれんげ草が咲き、緑肥になります。その頃になると養蜂家(はちや)がやってきて蜜を集めていき、農家は田畑へ堆肥を運び、泥田を耕し、春ぶなが卵を産みに沼や田にやってきて、川辺は春ぶなやドジョウやタニシ、カラス貝などで賑わいます。

菜種の収穫が終わり、大麦、小麦のとり入れをしている頃、春蚕のあがり、夏蚕の掃立てと養蚕業も忙しくなります。新ジャガイモや空豆、トウモロコシなどとともに塩ゆでしたヒシの実や、田んぼの草とりの際に獲ったタニシを油味噌にしていました。

※川えびなどが草などにかじりつくことを生井地区では「かびりつく」と言います。

 

彼岸をすぎるとすっかり空も秋めいて、台風を気にしながら作物のとり入れを急ぎます。水神さまの祭りに欠かせないえび大根は、「ささえび」を使います。川や沼や岸辺の草が寒さで枯れて寒さをしのぐために笹にかびりつく川えびを獲るところから「ささえび」と呼ばれています。

大麦や小麦の麦踏みを残して野良仕事が一段落する師走には、沼や堀の薄氷を割り、寒ぶなとりで賑わいます。おつけ(みそ汁)には、この時期おいしくなる「寒しじみ」を入れ、手打ちうどんには、ドジョウのけんちん汁をしたじ(つけ汁)にしていただいていました。12月になると沼や掘をかい掘りしてナマズ、フナ、コイ、ウナギなどの魚がたくさん獲れ、特にこの時期のフナは「寒ぶな」と呼ばれ、弁慶刺しにして正月に甘露煮や昆布巻きとして使用していました。ナマズやコイは、樽などに生かしておき、正月のお客様に振る舞っていたそうです。